原著論文

*は責任著者(corresponding author)を示します。 Google Scholarの情報はこちらへ。

1.Kitada R*, Doizaki R, Kwon J, Nakagawa E, Kajimoto H, Sakamoto M, Sadato N (accepted) Brain networks underlying tactile softness perception: a functional magnetic resonance imaging study NeuroImage

2. Ito K*, Chew Wei O, Kitada R* (in press) Emotional Tears Communicate Sadness But Not Excessive Emotions Without Other Contextual Knowledge. Frontiers in Psychology

3. Suvilehto JT, Nummenmaa L, Harada T, Dunbar RIM, Hari R, Turner R, Sadato N, Kitada R* (in press) Cross-cultural similarity in relationship-specific social touching Proceedings of the Royal Society B

4. Fahey S, Santana C, Kitada R,Zheng Z* (in press) Affective judgment of social touch on a hand modulated by hand embodiment Quarterly Journal of Experimental Psychology

5. Sasaki AT, Okamoto Y, Kochiyama T, Kitada R*, Sadato N (2018) Distinct sensitivities of the lateral prefrontal cortex and extrastriate body area to contingency between executed an4 observed actions Cortex, 108巻, 234-251.

[成果概要]私たちの研究チームはこれまで視覚野の一部であるExtrastriate Body Area (EBA)と呼ばれる部位が、動作に関する視覚的な情報を処理するだけでなく、自らの運動に関わる信号を受け取り、2つの信号の比較をしていることを示してきた(Okamoto et al., 2014). この研究はその続編で、EBAが視覚と運動のどのような情報を比較しているのかを調べている。実験では自分が指定された動作を行った後、自分か他者が行う動作を見てその一致度を判断した。判断中の脳活動を計測した結果、EBAは手足が誰のものか、行う動作と観察する動作のタイミングの異同に関わらず、自分の動作と観察した動作が一致する条件で一致しない条件より強く活動することが分かった。その一方で前頭前野外側部は自分の動作を見た場合や他者がまねをした場合といった、意味のある状況に選択的に活動をすることが分かった。これらの結果は、EBAや他の部位が行った動作と観察した動作を比較し、その結果を前頭前野外側部が統合している可能性を示唆している。

6. Rajaei N, Aoki N, Takahashi HK, Miyaoka T, Kochiyama T, Ohka M, Sadato N, Kitada R* (2018) The brain networks underlying conscious tactile perception of textures revealed by the Velvet Hand Illusion Human Brain Mapping, 39, 4787-4801.

[成果概要]両手で格子状のワイヤをこすると、その間にベルベット状の素材を感じることができる。この錯覚はベルベット錯覚と呼ばれるが、その神経基盤を調べることで、私たちがテクスチャを意識的に知覚するために重要な脳部位を調べることができる。本研究では一次体性感覚野と呼ばれる部位の一部が錯覚の強さに応じて活動を変化させるだけでなく、本物のベルベットに触れたときにも活動することを明らかにした。さらにこの部位と周辺の脳部位は課題に応じて機能結合(ネットワーク解析の指標の一つ)の強さを変化させることがわかった。このネットワークにはテクスチャの処理に重要とされる二次体性感覚野や島部が含まれており、周辺部位で処理された情報が一次体性感覚野に戻ってくることで意識的なテクスチャの知覚が行われるのではないかと推論している。

7. Okamoto Y*, Kitada R, Miyahara M, Kochiyama T, Naruse H, Sadato N, Okazawa H, Kosaka H (2018) Altered perspective-dependent brain activationfor viewing hands and associated imitation difficulties for individuals with ASD NeuroImage: Clinical, 19, 384-395 

[成果概要] 健常者と自閉症スペクトラム者では、自己の身体の認識に違いがあるという研究報告がある。そこで自分や他者の身体を複数の視点で観察したとき、健常者と自閉症スペクトラム者で脳活動にどのような違いがあるのかを調べた。その結果、本来視覚野と考えられているLOTC (lateral occipito-temporal cortex)や内側前頭前野と呼ばれる脳部位は、健常者では視点の変化に応じて活動を変化させたが、自閉症群ではそのような変化が見られなかったかまたは、健常者と逆のパターンを示した。これらの部位が自己の身体の認識の違いに関連している可能性がある。

8. Kawamichi H*, Sugawara SK, Hamano YH, Kitada R, Nakagawa E, Kochiyama T, Sadato N (2018) Neural correlates underlying change in state self-esteem Sci Rep. 8巻,  1798link

[成果概要] 私たちの自尊心は他者からの評価によって変化する。本研究では自分の評判の良し悪しが自尊心に影響を与えるときに、どのような脳部位が関与するのかを調べている。評判によって自尊心がどのくらい変化するかは人によって異なるが、 楔前部(Precuneus)と呼ばれる部位はこの個人差に関連した脳活動を示した。さらにこの個人差は、楔前部と関連した脳部位の間の機能結合とも関連を示した。この結果は楔前部が、 他者の評価を自尊心の度合いに変化させるときに、重要な部位として働いていることを示している。

9. Sumiya M, Koike T, Okazaki i, Kitada R*,Sadato N* (2017) Brain networks of social action-outcome contingency: the role of the ventral striatum in integrating signals from the sensory cortex and medial prefrontal cortex.Neurosci Res. 123巻, pp.43-54 PDF

[成果概要] 日常会話では、一人が話して相手がそれに反応することが繰り返される。話者は相手の反応が良ければもっと話をしたいと感じる。これまで脳の深部にある線条体と呼ばれる部位が、お金や褒めのような報酬の情報処理に重要であり、社会的なやりとりにも関わることが示唆されていたが、社会的やりとりに対する線条体の反応がどのように起きるのかについては不明であった。参加者が大喜利をおもしろく読みあげてそれに対する観客の反応を聞くときの脳活動を、機能的磁気共鳴現象画像法(fMRI)を用いて測定したところ、大脳皮質の一部である内側前頭前野は(他人ではなくむしろ)自分が大喜利を読み上げたときに活動するだけでなく、線条体が感覚野から受け取る観客の反応に関する信号を変化させた。この結果は線条体の社会的やりとりに対する反応が、感覚野と内側前頭前野の信号が統合されることで生じることを示唆する。

10. Fujimoto S, Tanaka S, Laakso I, Yamaguchi T, Kon N, Nakayama T, Kondo K and Kitada R* (2017) The Effect of Dual-Hemisphere Transcranial Direct Current Stimulation Over the Parietal Operculum on Tactile Orientation Discrimination. Front. Behav. Neurosci. 11巻:173

[成果概要]右手を刺激すると 二次体性感覚野(SII)の左右両側の活動が起きることが知られているが、この両側の活動の関係性はどうなっているのだろうか。電気生理学的研究ではSIIの神経細胞の受容野は両側に広がるため、両側の部位は協力して感覚処理を行っている可能性がある。その一方で体性感覚野周辺の領域では、両側間で活動を抑制することも知られており、二次体性感覚野にも当てはまる可能性がある。この点を調べるため、SII上の頭蓋に電極を装着し、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を与えている際に、右手による方位弁別課題を実施した。もし左右ともに触覚弁別に役立っているのであれば左脳に陽極(増強)、右脳に陰極(抑制)刺激を与えると成績が下がるはずである。その一方でもしお互いに抑制しあっているのであれば成績は上がるはずである(抑制効果を与えるはずの右脳が抑制されるため、左脳の活動がより増強される)。その結果、両側のtDCSは右手の弁別成績を上げることが分かり、SIIは両側間で活動を抑制している可能性が示唆された。

11. Okamoto Y*, Kosaka H, Kitada R, Seki A, Tanabe HC, Hayashi MJ, Kochiyama T, Saito DN, Yanaka HT, Munesue T, Ishitobi M, Omori M, Wada Y, Okazawa H, Koeda T, Sadato N (2017) Age-dependent atypicalities in body- and face-sensitive activation of the EBA and FFA in individuals with ASD. Neurosci Res.119巻, pp.38-52

[成果概要] 自閉症の特徴の一つとして、非言語によるコミュニケーション(例えば表情やジェスチャー等によるコミュニケーション)が定型発達者と異なることが知られている。この特徴は大人より子供でより顕著であるといわれている。そこで大人と子供を対象に顔や身体の部位の知覚に重要とされる脳部位(FFA, EBA)の変化を観察した。これらの脳部位の活動は大人では自閉症者でも健常者でも違いがないが、子供では脳部位の活動が自閉症者のほうが小さいことがわかった。この結果は顔や身体の部位の発達の違いが、自閉症者と定型発達者の非言語コミュニケーションの違いを説明する可能性を示している。

12. Yang J, Kitada R*, Kochiyama T, Yu Y, Makita K, Araki Y, Wu J*, Sadato N (2017) Brain networks involved in tactile speed classification of moving dot patterns: the effects of speed and dot periodicity Sci Rep. 7, 40931

[成果概要] 物の素材の属性を知ろうとすると、私たちはたいてい手で物を押したりこすったりする。この手と物の間の動きにはその向き(方向)と速さ(速度)があるが、私たちがどのように速度を知覚するのかについては良く分かっていない。先行研究によると触覚の動きの知覚には視覚野が重要な役割を果たすといわれている。しかし本当に物体の属性を抽出するのに重要な体性感覚野から離れたところでそのような処理を行うのだろうか?そもそも動きに対する素材知覚の恒常性(例:いくら早く手を動かしても粗いものは粗い)を考えれば、より体性感覚野内またはその周辺で処理が行われていると考えたほうがしっくりくる。この研究ではヒトが素材に触れて速度を分類するときの脳活動を計測した。その結果、速度に応じて二次体性感覚野などの部位が活動を変化させることが分かった。さらに触れるテクスチャによって速度の知覚が変化することを示し、一次体性感覚野がそのテクスチャの違いに対して反応を変えることを発見した。そしてこの一次体性感覚野と二次体性感覚野の関係性(機能的結合)が課題条件によって変化することを発見した。視覚野は体性感覚野と異なり速度に関する情報を持っているかどうかは分からなかった。この研究は触れた物体の速度に応じて活動が変化する脳部位を同定した、世界で初めての研究である。

13. Tanaka SC*, Yamada K*, Kitada R, Tanaka S, Sugawara SK, Ohtake F and Sadato N (2016) Overstatement in happiness reporting with ordinal, bounded scale.Sci Rep. 6, 21321.

[成果概要]心理学で用いる幸福度と呼ばれる指標では、「あなたは現在どれくらい幸せだと感じていますか?何点に相当するかを、1-10点の中からから選んでください」といった質問をする。この様に測定された幸福度の動きに基づいて経済政策を行うことが提言されているが、どのように正しく幸福度を測定できるのだろうか。経済学の考え方では人間の感情の表現に上限はなく、いくらでも好きな値をとることが可能とされている。そこで、金銭報酬を得たときの嬉しさの度合いを報告する際の脳活動を記録するfMRI実験を行い、嬉しさの報告に上限のある方法を用いる時と、経済学的な、上限のない自由な方法で報告を行う時の脳活動の差を分析した。これらの活動が同じであれば、人間の感情の度合いの表明というのは共通の機能にのっとった普遍的なものであり、幸福度は幸せであるという感情を正しく測定しているはずである。しかしこれに反し、①1-10の尺度を用いるときと、自由な数値を用いるときでは、幸福度のパターンが異なること、②脳の賦活パターンも後頭頂皮質や線条体において異なること、が分かりました。これらの結果から、幸福度という指標をどのように測定するのかについてより注意する必要があることが示唆された。

14. Takahashi HK, Kitada R*, Sasaki AT, Kawamichi H, Okazaki S, Kochiyama T and Sadato N* (2015) Brain networks of affective mentalizing revealed by the tear effect: the integrative role of the medial prefrontal cortex and precuneus. Neuroscience Research101巻 pp. 32-43 (査読有)

[成果概要] 社会的認知とは、人が社会から情報を認知するための複数の過程を指す。これらの過程のうち、他者の感情を推測する過程は感情的メンタライジング(Affective mentalizing)という。先行研究から社会的認知には様々な脳部位が関わることが明らかになっている。そのうち内側前頭前野・後部帯状回・側頭-頭頂接合部は感情的メンタライジングに関わる重要なネットワークを構成すると言われている。しかしこの3つの脳部位が感情的メンタライジングに対し、どのような役割を果たすのか不明な点が多い。そこで本研究では、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、内側前頭前野・後部帯状回・側頭-頭頂接合部のうち、どの脳部位が「涙」と「顔表情」という社会的手がかりの統合に関わるのかどうかを検討した。その結果、内側前頭前野と後部帯状回が涙と悲しみ表情の統合に重要な役割を果たすが、側頭-頭頂接合部は涙と悲しみ表情の統合には関わらず、涙の処理に関与することが分かった。本研究結果は感情的メンタライジングにおけるネットワークのうち大脳皮質内側部(内側前頭前野と後部帯状回)と外側部(側頭-頭頂接合部)では役割分担が異なることを示唆している。

15. Kawamichi H*, Kitada R*, Yoshihara K, Takahashi H and Sadato N (2015年) Interpersonal Touch Suppresses Visual Processing of Aversive Stimuli. Frontiers in Human Neuroscience 9巻 164 (査読有)(first and second authors equally contributed to the study) PDF

[成果概要] 親しい人と手をつなぐと、知覚する痛みの強さや痛みに関連した脳活動が減弱することが知られている(Coan et al., 2006 Psychological Science)。この結果が他の不快刺激に対しても汎化できるかどうかを検討するため、本研究では視覚による不快刺激に対する脳活動が手つなぎによってどのように変容するのかを検討した。不快刺激と不快さを伴わない中性刺激を呈示した時の活動を比較し、不快刺激による脳活動を描出した。その結果、偽物の手と接触しているときより、親友の手とつないでいるときの方が、視覚野(後頭葉)の一部の活動が減弱することが明らかになった。ただし、刺激に対する不快さの評定には親友の手と偽物の手の間に変化がないことから、不快刺激に対する余分な神経活動の処理が減弱されたと解釈した。

16. Okamoto Y, Kitada R (17名中2番目), Tanabe HC, Hayashi MJ, Kochiyama T, Munesue T, Ishitobi M, Saito DN, Yanaka HT, Omori M, Wada Y, Okazawa H, Sasaki AT, Morita T, Itakura S, Kosaka H and Sadato N*(2014年) Attenuation of the contingency detection effect in the extrastriate body area in autism spectrum disorder. Neuroscience Research 87巻 pp. 66-76 (査読有) PDF

[成果概要] 自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供は,自分の動作が真似をされたことに対して、気づくのが苦手である(Nadel, 2002 The Imitative Mind: Development Evolution and Brain Basis; Berger and Ingersoll, 2015 Autism Research)。しかし脳のどのような働きが原因で,真似をされたことに気づくのが苦手であるのかは不明だった。本研究では,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて,自分の動作が相手に真似をされたときの脳活動を測定した。その結果,他者の真似に気づくことに関わる脳部位(Extrastriate Body Area, EBA)の活動が,健常者に対しASD者で減少していた。この脳部位の活動低下は,「なぜASD者は真似をされたことに気づきにくいのか」という謎を明らかにするための一助となる。(プレスリリース有、様々なメディアに取り上げられました)

17. Kitada R*, Sasaki AT, Okamoto Y, Kochiyama T and Sadato N (2014年) Role of the precuneus in the detection of incongruency between tactile and visual texture information: A functional MRI study. Neuropsychologia, 64巻, pp.252–262 (査読有)PDF

[成果概要] 我々の周りにある物体のほとんどが人工物であり,質感を高めるためのコーティングが施されている。そのためレンガに見える壁紙のように,見た目の質感は本物そっくりだが,手触りが全く異なることが多い。我々はどのようにして見た目と手触りの違いを検知するのだろうか?本実験では、実験参加者が視覚と触覚で物体を知覚している最中の脳活動を計測した。参加者は知覚した刺激の (1)素材が視覚と触覚で同じであるか(素材条件)(2)方位が視覚と触覚で同じであるか(方位条件)、について回答した。方位に比べて素材の比較を行っている条件では、側頭葉内側部(Medial Temporal Lobe)の活動が見られた。さらに楔前部(Precuneus)と呼ばれる脳部位は視触覚で素材特徴が異なる場合に特異的に強い反応を示した。これらの結果から、側頭葉内側部と楔前部を含む脳内ネットワークが視覚と触覚の素材の情報の比較に重要な役割を果たすことが分かった。これらの領域はアルツハイマー病の前駆症状時に活動低下がみられる領域で,記憶に密接に関与している。そこで素材の触り心地からその視覚イメージが想起され,それが実際の見た目と比較するためにこれらの脳部位が賦活したものと解釈した。本研究成果はどのように脳は素材の見た目とさわり心地を比較するのかを理解する上で重要な知見となる。

18. Kitada R*, Yoshihara K, Sasaki AT, Hashiguchi M, Kochiyama T and Sadato N (2014年) The brain network underlying the recognition of hand gestures in the blind: the supramodal role of the extrastriate body area. The Journal of Neuroscience, 34巻, pp. 10096-10108 (査読有)PDF

[成果概要] 日常において我々は目を使って,相手が行う動作を素早く理解したり学んだりする。他者の動作を観察しても自身が同じ動作を行っても共通の活動が見られる脳内システム(ミラーシステム)やそれに関連した脳内ネットワークが、動作の学習と理解を可能にするといわれている。では目が生まれつき見えない場合、この脳内ネットワークは発達するのだろうか。Stevie Wonderや辻井 伸行氏のように先天的に失明していても,世界的に活躍しているアーティストはたくさんおり,相手の動作を理解したり学んだりすることは可能である。本研究では,先天的に失明した場合に動作認識ネットワークに及ぼす影響を明らかにするために,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて,他者の手に触れてその動作を識別している時の脳の活動を測定した。その結果,このネットワークの一部は,生まれつき目が見えない人でも,目が見える人と同じように,活動をすることが分かった。本研究成果は,「なぜ目が見えなくても,相手の手の動作を知ることができたり,学んだりできるのか」という謎を明らかにする一助になる。(プレスリリース有, 様々なメディアに取り上げられました)

19. Miyahara M*,Kitada R*, Sasaki AT, Okamoto Y, Tanabe HC and Sadato N (2013年) From gestures to words: spontaneous verbal labeling of complex sequential hand movements reduces fMRI activation of the imitation-related regions. Neuroscience Research, 75巻, pp. 228-238 (査読有)PDF

[成果概要] ヒトは目を介した模倣によって, 様々な動作を学習する。ダンスのように模倣する動作の数が複雑になるにつれ,模倣する動作の各部分に対し言語的なラベルをする(グー・チョキ・パーのように)可能性がある。言語ラベルの方略は模倣に関わる脳内ネットワークにどのような影響を与えるのか,健常者を対象とした機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で検討した。その結果,言語ラベルを使用しない場合に比べて使用する場合では,模倣に関連するとされる脳部位の活動が減少することを発見した。言語ラベルは模倣学習における負担を減らす科学的証拠の一部となると考えられる。

20. Kitada R*, Okamoto Y, Sasaki AT, Kochiyama T, Miyahara M, Lederman SJ and Sadato N (2013年) Early visual experience and the recognition of basic facial expressions: involvement of the middle temporal and inferior frontal gyri during haptic identification by the early blind. Frontiers in Human Neuroscience, 7巻, 7 (査読有)PDF

[成果概要] 生まれつき目の見えない視覚障害者(早期失明者)は,わざと悲しい顔をしたり,逆に疲れた表情を隠したりすることなど,感情に関わる顔表情を制御するのが、晴眼者に比べて難しいことがある(Galati et al., 1997, Journal of Personality and Social Psychology)。この原因として、視覚情報のフィードバック(鏡や他者の反応)を幼少時から受けなかったことが原因であると考えられる。この問題を解決する方法の一つとして, 視覚の代わりに触覚を使う方法が考えられる。つまり自分の顔を触ることで,自分の表情がどのようなものかを理解し,保護者や先生の顔を触ることで,どのように顔筋を動かせばよいのかが分かる。このような方法を提案するに当たり,顔表情が触覚でわかることが前提である。では早期失明者は,どの程度他者の顔表情が分かるのだろうか? この問題に取り組むために,心理物理学実験と機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による実験を実施した。参加者は触覚を用いて基本的な顔表情(嫌な・うれしい・中性・悲しみ・驚き)を識別した。その結果,事前に答えを伝えなくても,晴眼者でも早期失明者でも基本的な顔表情を同じように(偶然確率以上)に識別することができた。さらに視覚による顔表情の認識に関わる脳内ネットワークが,晴眼者でも早期失明者でも触覚による顔表情認識で活動することが分かった。この結果は視覚経験がないとしても,顔表情に関する情報を処理する機構が発達しており,自分と他者の顔を触ることで自分の表情のフィードバックを得る方法を確立する上での一助になるかもしれない。

21. Kitada R*, Sadato N and Lederman SJ (2012年) Tactile perception of nonpainful unpleasantness in relation to perceived roughness: Effects of inter-element spacing and speed of relative motion of rigid 2-D raised-dot patterns at two body loci. ,Perception, 41巻, pp. 204-229 (査読有)PDF

[成果概要] 我々が物体に触れると,その物体の物理的特徴(粗さ・硬さ等)が知覚できるだけでなく,自身に対して快・不快といった感情が生じる。前者は弁別的触覚とよび,後者は感情的触覚と呼ばれる。この2つの触覚の関係性については不明な点が多い。本研究で私たちは,弁別的触覚である「粗さ知覚」と感情的触覚である「不快感情」との関係性を同じ刺激を用いて心理物理学的に計測した。その結果,粗さと不快感情の心理物理学的関数は極めて類似しているが,速度を変化させた場合,速度に対する知覚強度の影響は不快条件の方が粗さ条件に比べた強いことが分かった。この結果は,不快さと粗さの知覚には同一のメカニズムが関与している一方で,外界の特徴を忠実にとらえるべきである粗さ知覚には,速度に対する恒常性があることを示している。

22. Pawluk D*,Kitada R, Abramowicz A, Hamilton C and Lederman SJ (2011年) Figure/Ground Segmentation via a Haptic Glance: Attributing Initial Finger Contacts to Objects or Their Supporting Surfaces. IEEE Transactions on Haptics, 4巻, pp. 2-13 (査読有)PDF

[成果概要] リュックの中にある財布を取り出そうとするとき,我々は何の苦も無く,財布とリュックの布地との区別を行うことができる。このように我々は様々な皮膚入力をからどの入力がまとまりになって,他の入力と別れるのか,すぐに判断できる。これは知覚体制化と呼ばれる現象で,視覚ではゲシュタルト心理学,聴覚では情景分析と呼ばれることがある。しかし触覚に関する知覚体制化についてはD KatzやJJ Gibson以降,研究がほとんど行われていない。そこで知覚体制化で代表的な例である図と地(Figure/Ground)の問題を晴眼者を対象に心理物理学的に実施し,触覚の知覚体制化のフレームワークを提案した。

23. Kitada R*, Johnsrude IS, Kochiyama T and Lederman SJ (2010年) Brain networks involved in haptic and visual identification of facial expressions of emotion: an fMRI study. NeuroImage, 49巻, pp. 1677-1689 (査読有)PDF

[成果概要] 晴眼者を対象に,触覚を用いた顔表情の認識に関わる神経基盤を明らかにした。靴の認識に比べて,顔表情の認識では,視覚でも触覚でも共通した脳内ネットワーク(下前頭回・後頭頂小葉・上側頭溝)の賦活が観察された。が働いていることが明らかになった。この成果は「なぜ手で触るだけで顔の基本的表情が分かるのか」を説明する一助になる。

24. Kitada R*, Dijkerman HC, Soo G and Lederman SJ (2010年) Representing human hands haptically or visually from first-person versus third-person perspectives. Perception, 39巻, pp. 236-254 (査読有)PDF

[成果概要] 手の認識に関する心的回転課題を実施し,手の典型的方位(canonical orientation)が視覚と触覚で共通していることを明らかにした。さらに第三者視点に立った場合, 手の典型的方位が視覚では第三者側に変化するが, 触覚では視覚に比べて変化しにくいことを示した。

25. Kitada R*, Johnsrude IS, Kochiyama T and Lederman SJ (2009年) Functional specialization and convergence in the occipito-temporal cortex supporting haptic and visual identification of human faces and body parts: an fMRI study. Journal of Cognitive Neuroscience, 21巻, pp. 2027-2045 (査読有)PDF

[成果概要] ハサミのような日常的な物体であれば,見るだけでなく触るだけでも簡単に認識できる。しかし触覚入力が脳でどのように解釈されることで,物体が認識されるのかについてはよく分かっていない。本研究では晴眼者を対象に機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて,触覚による物体の認識に関わる脳内ネットワークを調べた。高次視覚野には観察する物体のカテゴリに対して選択的に反応する領域が存在する。それらの領域のうち、顔に対し特異的に反応する領域(Fusiform Face Area)や身体部位に特異的に反応する領域(Extrastriate Body Area)は視覚でも触覚でも同じような反応選択性を持つことが明らかになった。これらの結果は、本来視覚に専ら関わると考えられていた高次視覚野が、触覚の物体認識に関わることを示している。

26. Lederman SJ*, Klatzky RL, Abramowicz A, Salsman K, Kitada R and Hamilton C (2007年) Haptic recognition of static and dynamic expressions of emotion in the live face. Psychological Science, 18巻, pp. 158-164 (査読有)PDF

[成果概要] 晴眼者(目の見える人)は視覚だけでなく, 触覚を用いるだけでも, 顔の基本的な感情を偶然確率(Chance level)以上に識別できることを明らかにした。

27. Lawrence MA, Kitada R, Klatzky RL and Lederman SJ* (2007年) Haptic roughness perception of linear gratings via bare finger or rigid probe. Perception, 36巻, pp. 547-557 (査読有)PDF

[成果概要] 粗さは触覚の素材知覚にとって, 重要な感覚単位の一つである。粗さ知覚の心理物理学実験には, 線形格子と呼ばれる表面が標準的に使用される。本研究は線形格子の溝の長さ(Groove width)・棟の長さ(Ridge width)が粗さ知覚に与える影響を包括的に明らかにした。

28. Kitada R, Kito T, Saito DN, Kochiyama T, Matsumura M, Sadato N* and Lederman SJ (2006年) Multisensory activation of the intraparietal area when classifying grating orientation: a functional magnetic resonance imaging study. The Journal of neuroscience, 26巻, pp. 7491-7501 (査読有)PDF

[成果概要] ヒトは触覚を用いて物体から様々な属性を抽出することができる。その属性は空間的情報(形・方位)と素材的情報(粗さ・硬さ・温度)に大別される。例えば脳が方位をコードする場合は,何らかの空間座標系が必要である。その一方で素材的情報は、強度という指標に情報をまとめ上げられる。 本研究では機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、頭頂間溝は物体の粗さ強度の選択に比べて方位の選択時に強い活動を示すことを明らかにした。さらにこの活動の一部は視覚による方位選択時にも活動することが分かった。これらの結果は、触覚が抽出した方位情報と粗さ情報が分散的に処理されているという仮説を支持しており、感性情報を脳内から読み取る応用研究を行う上で重要な知見となる。

29. Kilgour AR,Kitada R, Servos P, James TW and Lederman SJ* (2005年) Haptic face identification activates ventral occipital and temporal areas: an fMRI study. Brain and Cognition, 59巻, pp. 246-257 (査読有)PDF

[成果概要] 顔に触れることで個人の識別が可能である (Kilgour and Lederman, 2002, Perception and Psychophysics)。本研究では機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用い,触覚による顔識別には古典的な体性感覚野ではなく,視覚の物体認識に重要である紡錘状回が関与することを明らかにした。

30.Kitada R, Hashimoto T, Kochiyama T, Kito T, Okada T, Matsumura M, Lederman SJ and Sadato N* (2005年) Tactile estimation of the roughness of gratings yields a graded response in the human brain: an fMRI study. NeuroImage, 25巻, pp. 90-100 (査読有)PDF

[成果概要] ヒトは触覚を用いて物体から様々な属性を抽出することができる。粗さ・硬さ・温度といった素材的情報は、強度という指標に情報がまとめ上げられる。ではこの強度情報は脳でどの領域に反映されているのだろうか。本研究では機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、被験者が線形格子の知覚粗さ強度を推定しているときの脳活動を測定した。その結果、二次体性感覚野・島部・外側前頭前野が粗さ強度に関連した活動を示した。この結果は、「知覚粗さ強度が脳でどのように表現されているのか」について明らかにしたものであり、感性情報を脳内から読み取る応用研究を行う上で重要な知見となる。

31.Kitada R, Kochiyama T, Hashimoto T, Naito E and Matsumura M (2003年) Moving tactile stimuli of fingers are integrated in the intraparietal and inferior parietal cortices. Neuroreport, 14巻, 719-724 (査読有)PDF

[成果概要] カバンの中から財布を取り出すとき,すぐに財布とカバンの布地を触り分けることができる。このように触覚の情報がどの物体に由来しているのかを、まとめ上げ(群化)、切り分ける(分離)ことを知覚体制化という。視覚や聴覚に比べ,触覚の知覚体制化についてその性質は分かっていない。本実験では触覚にも,視覚のゲシュタルトの共通運命(Common Fate)と類似した法則があることを心理物理学的に明らかにし,機能的磁気共鳴法(fMRI)で頭頂間溝が触覚の共通運命の処理に重要であることを示した。

32. Naito E, Kochiyama T, Kitada R, Nakamura S, Matsumura M, Yonekura Y and Sadato N* (2002年) Internally simulated movement sensations during motor imagery activate cortical motor areas and the cerebellum. The Journal of neuroscience 22巻, pp. 3683-3691 (査読有)PDF

[成果概要] 運動錯覚と運動イメージ中の脳活動をポジトロン断層法 (PET)を用いて測定し,補足運動野・帯状回運動皮質・外側運動前野・小脳は, 運動イメージ中でも運動錯覚時にも活動することを示した。これらの結果はKitada et al. (2002)と共に, 運動イメージ中には運動感覚が生じている可能性を示している。

33. Kitada R, Naito E, and Matsumura M* (2002年) Perceptual changes in illusory wrist flexion angles resulting from motor imagery of the same wrist movements. Neuroscience, 109巻, pp. 701-707 (査読有)PDF

[成果概要] 運動イメージはアスリートには欠かせないトレーニングである。本研究は振動刺激による運動錯覚は, 運動イメージによって干渉を受けることを心理生理学的に明らかにした。この結果は運動イメージをすると,実際に動かさなくても,動かした感覚を感じる可能性を示唆している。